障害年金の概要

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取れることができる年金です。障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やけがで初めて医師または歯科医師の診療を受けたときに「国民年金」に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。なお。障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。また障害年金を受け取るには年金の納付状況などの条件が設けられています。

請求するまでの 3つのポイント

Point.1 初診日要件

障害の原因となった傷病で初めて受診した日に次のいずれかの間にあること

  • 国民年金加入期間
  • 厚生年金加入期間
  • 20歳前または日本国内に住んでいる60歳以降60歳未満の方で年金制度に加入していない期間

Point.2 保険料納付要件

初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。

【解説】                                                                被保険者期間は、20歳から初診日がある月の2か月前(令和元年7月)までの15カ月です。                             このうち保険料納付済期間および保険料免除期間は12カ月です。 上記の例では、保険料納付済期間および保険料免除期間が3分の2以上(10ヵ月以上)あるので納付要件は満たしています。

 
保険料の納付要件の特例

次のすべての条件に該当する場合は、納付要件を満たします。

  • 初診日が令和8年4月1日前にあること
  • 初診日において65歳未満であること
  • 初診日の前日において、初診日がある2カ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと

【解説】                                                                 初診日がある月の2か月前までの直近1年間(平成30年8月から令和元年7月まで)に保険料の未納期間がないので上記の例で納付要件を満たします。 ※初診日が平成3年5月1日よりも前も場合は、納付要件が異なります。

Point.3 障害状態該当要件

障害認定日による請求                                                           

初診日から1年6か月経過した日(障害認定日)に法令で定める障害の状態にあるときは、障害認定日の翌月分から年金を受け取ることができます。このことを「障害認定日による請求」といいます。※遡って障害認定日請求をし、認定された場合でも、時効により5年よりも前の分については年金を受け取ることはできません。

遡及認定日による請求

認定日による請求を1年以上遡及して行う場合、障害認定日時点の診断書のほかに、現在の症状の診断書(年金請求日以前3か月以内の現症のもの)が必要になります。この場合、障害認定日で受給権が発生しない(認定日で認定されなかった)場合は、事後重症請求をしますという旨が記入された「障害給付 請求事由確認書」も合わせて提出しておくことにより、現在の診断書でもう一度審査を受けることができます。※症状固定に該当することのみの審査希望(例えば心臓ペースメーカーの場合であれば、術後の経過および予後等の総合的判断を希望しない)の場合は、その事実が確認できる診断書であれば、現在の診断書1枚のみでもよい。

事後重症による請求                                                           

障害認定日に法令に定める障害の状態に該当しなかった方でも、その後病状が悪化して、法令に定める障害の状態になったときには請求日の翌月から障害年金を受け取ることができます。このことを「事後重症による請求」といいます。※請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。65歳を過ぎると事後重症請求はできません。

障害等級について

障害等級1級

他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態。身の回りのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)

障害等級2級

必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害。例えば、家庭内で軽食を作るほどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)

障害等級3級

労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態。日常生活にほとんど支障はないが、労働について制限がある方

 

(注意)障害者手帳の等級とは異なります

障害の程度1級

障害の状態

  1. 両眼の視力の和が0.04以下のもの
  2. 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
  3. 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
  4. 両上肢のすべての指を欠くもの
  5. 両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
  6. 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
  7. 両下肢を足関節以上で欠くもの
  8. 体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
  9. 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  10. 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
  11. 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

障害の程度2級

障害の状態

  1. 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
  2. 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
  3. 平衡機能に著しい障害を有するもの
  4. そしゃくの機能を欠くもの
  5. 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
  6. 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
  7. 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
  8. 一上肢の機能に著しい障害を有するもの
  9. 一上肢のすべての指を欠くもの
  10. 一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
  11. 両下肢のすべての指を欠くもの
  12. 一下肢の機能に著しい障害を有するもの
  13. 一下肢を足関節以上で欠くもの
  14. 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
  15. 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
  16. 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
  17. 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
  18. 1級と2級は、国民年金法施行令別表より引用しています。障害基礎年金、障害厚生年金共通です。

障害の程度3級(厚生年金保険のみ)

障害の状態

  1. 両眼の視力が0.1以下に減じたもの
  2. 両耳の聴力が40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
  3. そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
  4. 脊柱(せきちゅう)の機能に著しい障害を残すもの
  5. 一上肢の三大関節のうち、二関節の用を廃したもの
  6. 一下肢の三大関節のうち、二関節の用を廃したもの
  7. 長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
  8. 一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の三指以上を失ったもの
  9. おや指及びひとさし指を併せ一上肢の四指の用を廃したもの
  10. 一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
  11. 両下肢の十趾(し)の用を廃したもの
  12. 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
  13. 精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
  14. 傷病が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣が定めるもの

厚生年金保険法施行令別表第1より引用しています。

障害手当金(厚生年金保険のみ)

障害の状態

  1. 両眼の視力が0.6以下に減じたもの
  2. 一眼の視力が0.1以下に減じたもの
  3. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  4. 両眼による視野が二分の一以上欠損したもの又は両眼の視野が10度以内のもの
  5. 両眼の調節機能及び輻輳(ふくそう)機能に著しい障害を残すもの
  6. 一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
  7. そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの
  8. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
  9. 脊柱の機能に障害を残すもの
  10. 一上肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障害を残すもの
  11. 一下肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障害を残すもの
  12. 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
  13. 長管状骨に著しい転位変形を残すもの
  14. 一上肢の二指以上を失ったもの
  15. 一上肢のひとさし指を失ったもの
  16. 一上肢の三指以上の用を廃したもの
  17. ひとさし指を併せ一上肢の二指の用を廃したもの
  18. 一上肢のおや指の用を廃したもの
  19. 一下肢の第一趾又は他の四趾以上を失ったもの
  20. 一下肢の五趾の用を廃したもの
  21. 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
  22. 精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

厚生年金保険法施行令別表第1より引用しています。

(備考)視力の測定は、万国式試視力表によるものとし、屈折異常があるものについては、矯正視力によって測定する。

傷病手当金と障害厚生年金について

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。 なお、任意継続被保険者の方は、傷病手当金は支給されません。(健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている者は除く。)
 

障害厚生年金と傷病手当金は両方受給できるの?

同じ病気や怪我で障害厚生年金を受給している場合、傷病手当金は受給できません。
では具体的にどのように調整されるのでしょうか?
 
 
ケース1
障害厚生年金の年額を360で割った額(障害厚生年金の日額)と傷病手当金の日額を比べて、障害厚生年金の額の方が多い場合、傷病手当金は支給停止になります。

ケース2

障害厚生年金の年額を360で割った額(障害年金の日額)と傷病手当金の日額を比べて、障害年金の額の方が少ない場合、傷病手当金として障害年金と傷病手当金の差額が支給されます。

傷病手当金は、病気や怪我で休職を余儀なくされた時に、生活する上でとても心強い味方になります。しかし、傷病手当金の受給は1年6ヵ月を迎えると終了します。その後、障害厚生年金受給へとスムーズに切り替え、引き続き「安心」という精神的支えを得ながら治療に専念できるように傷病手当金受給中から障害年金請求の準備を進めることが重要になります。